
INSIDE
公開日:2023-03-15
視聴日:2025-08-17
レート:⭐️⭐️⭐️☆☆ (3/5)
高級アート泥棒のニモは、強盗が計画どおりに進まなかったため、 ニューヨークのペントハウスに閉じ込められてしまう。 貴重な芸術作品とわずかな食糧の中で、彼はどのように生き延びるのか――。
主演:Willem Dafoe
監督:Vasilis Katsoupis
ネタバレなし要約
美術品泥棒のニモは、ある日タワーマンションの最上階、ペントハウスに住む大富豪の家に忍び込む。
ところが、家を管理するセキュリティシステムが誤作動を起こし、ニモは部屋の中に閉じ込められてしまった。
外に出ようにも、厳重なセキュリティが逆に彼を逃がさず、脱出は困難を極める。やがて空調が暴走し、室温は40℃近くまで上昇。さらに水道もガスも止められており、飲み水を確保することさえ難しい状況に追い込まれていく。
日に日に体力も精神も削られていく中、ニモは天井のライトを壊し、そこから脱出しようと試みる。しかし、極限状態での作業中に誤って足を骨折してしまう。
果たしてニモは、この密室から無事に脱出できるのか。
そして彼が部屋の壁に描き始めた数々の絵には、いったいどんな意味が込められているのか――。
感想
さすがウィレム・デフォー。まさに怪演と呼ぶにふさわしい。
1時間45分、ほぼ彼ひとりしか映らないにもかかわらず、観客を惹きつけ続ける。
壊されていくはずの美しいペントハウスの部屋。だが、その破壊の過程すらも映像として美しい。
そして――すべてが完全に壊れ切ったラストこそ、最も美しく感じられるのだ。
ネタバレあり(クリックで展開)
この映画を観ていると、いくつか違和感を覚える場面がある。
たとえば、冒頭でセキュリティシステムが作動したにもかかわらず、警備会社が駆けつけない点。さらに終盤、火災報知機を作動させても消防車が来ない点だ。
これはあくまで私の解釈だが――もしかすると、このペントハウスの持ち主は、最初からニモを閉じ込めるつもりだったのではないだろうか。
ニモは物語の冒頭と終盤で「火事のときに持って逃げる3つ」として、飼い猫、ACDCのアルバム、そしてスケッチブックを挙げている。おそらく彼は人生を通じて芸術を愛してきた人物なのだろう。そしてペントハウスの主は、その芸術的な感性や才能を見抜いていたのかもしれない。あらかじめ長期不在の予定を泥棒グループに漏らし、ニモが忍び込むよう仕向け、閉じ込めたらどうなるか――新たな芸術作品が生まれるのではないかと期待していた可能性がある。
また、ニモ自身の行動にも不自然さがある。脱出の準備をするのに、いくら高齢とはいえ、時間をかけすぎているのだ。もしかすると彼はペントハウスの主の外出スケジュールを知っていて「まだ大丈夫」と思っていたのかもしれない。しかし逆に考えれば、芸術作品に囲まれ、一人きりでいられるこの環境を、むしろ好んでいたのではないだろうか。そして「ここで自分の作品を残す」と決意し、創作に取り組み始めたのかもしれない。
見る人によっては「閉じ込められて衰弱し、精神が錯乱して落書きをした」と解釈するだろう。だが私は、ニモは意図的に創作を行っていたのだと思う。
興味深いのは、部屋の環境がまるで「四季」を再現しているかのように変化することだ。
最初は室温が40℃近くまで上がる猛暑。やがて室温は下がり、真冬のような寒さへと変わる。観葉植物が枯れ、外には雪が降り、最後にはスプリンクラーによる洪水が訪れる。まるで春夏秋冬、さらには災害までを体験させているかのようだ。
さらに、監視カメラに映る清掃員ジャスミンの存在。最初ニモは彼女の仕事をさぼる姿を眺めて楽しんでいたが、やがて好意を抱くようになる。つまり彼は、閉じ込められた部屋の中で「恋愛」すら体験するのだ。
四季の移ろい、恋愛、そして生きる喜び。これらを経ながら、ニモは創作を続ける。
それは偶然の積み重ねなのか、それともペントハウスの主が意図的に仕組んだものなのか――。
おそらく両方が入り混じっているのだろう。そして最後に生まれた芸術作品は、「芸術が生まれること自体が奇跡である」というメッセージを放っているように思えてならない。
たとえば、冒頭でセキュリティシステムが作動したにもかかわらず、警備会社が駆けつけない点。さらに終盤、火災報知機を作動させても消防車が来ない点だ。
これはあくまで私の解釈だが――もしかすると、このペントハウスの持ち主は、最初からニモを閉じ込めるつもりだったのではないだろうか。
ニモは物語の冒頭と終盤で「火事のときに持って逃げる3つ」として、飼い猫、ACDCのアルバム、そしてスケッチブックを挙げている。おそらく彼は人生を通じて芸術を愛してきた人物なのだろう。そしてペントハウスの主は、その芸術的な感性や才能を見抜いていたのかもしれない。あらかじめ長期不在の予定を泥棒グループに漏らし、ニモが忍び込むよう仕向け、閉じ込めたらどうなるか――新たな芸術作品が生まれるのではないかと期待していた可能性がある。
また、ニモ自身の行動にも不自然さがある。脱出の準備をするのに、いくら高齢とはいえ、時間をかけすぎているのだ。もしかすると彼はペントハウスの主の外出スケジュールを知っていて「まだ大丈夫」と思っていたのかもしれない。しかし逆に考えれば、芸術作品に囲まれ、一人きりでいられるこの環境を、むしろ好んでいたのではないだろうか。そして「ここで自分の作品を残す」と決意し、創作に取り組み始めたのかもしれない。
見る人によっては「閉じ込められて衰弱し、精神が錯乱して落書きをした」と解釈するだろう。だが私は、ニモは意図的に創作を行っていたのだと思う。
興味深いのは、部屋の環境がまるで「四季」を再現しているかのように変化することだ。
最初は室温が40℃近くまで上がる猛暑。やがて室温は下がり、真冬のような寒さへと変わる。観葉植物が枯れ、外には雪が降り、最後にはスプリンクラーによる洪水が訪れる。まるで春夏秋冬、さらには災害までを体験させているかのようだ。
さらに、監視カメラに映る清掃員ジャスミンの存在。最初ニモは彼女の仕事をさぼる姿を眺めて楽しんでいたが、やがて好意を抱くようになる。つまり彼は、閉じ込められた部屋の中で「恋愛」すら体験するのだ。
四季の移ろい、恋愛、そして生きる喜び。これらを経ながら、ニモは創作を続ける。
それは偶然の積み重ねなのか、それともペントハウスの主が意図的に仕組んだものなのか――。
おそらく両方が入り混じっているのだろう。そして最後に生まれた芸術作品は、「芸術が生まれること自体が奇跡である」というメッセージを放っているように思えてならない。
好きなシーン
_____
心に残った台詞
_____
_____
良かった点
- _____
惜しい点
- _____